本日、チームホンダは帰国の途につきます。

そこで、本多隊長よりこの旅の総括をいただきました。

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-隊長総括-

今回の未踏峰遠征は、地元住民との確執による針路変更やルート上の落石等、幾多の困難を乗り越えて勝ち得た登頂とスキー滑降だけに、本当に万感の思いです。特に、今回始めての登山で参加という高いハードルを乗り越え、未踏峰登頂と世界初となるスキー滑降の両方を無事こなした鈴木彩乃隊員の成功は、本当に価値のある物だったとおもいます。これも応援団の皆様をはじめ、多くの皆様に頂いたご支援、ご声援の賜物です。これからも元気な限り、チームホンダとして夢ある冒険を続けて行きたいと思いますので、今後とも応援頂きますこと宜しくお願いします。

冒険は山だけに在る物ではありません。日常の生活の中にも、その頂上に登らなくてはならない「未踏峰」は幾つもあるものです。一歩 いっぽ あきらめない決意がある限り、人々の精神は、高い頂にも達することが出来るのです。

これからも夢を持ち、夢の実現にチャレンジして行きます。

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ご声援をいただいた皆々様、本当にありがとうございました。

隊長以下、これからもこの感動を忘れずに、あらたな「旅」に向かって精進いたします。

帰国後、スチルの現像が上がり次第、貴重な写真などをアップデートできるかと思います。

関係のみなさま、どうぞ今しばらくお待ちいただきたく思います。

 

ありがとうございます!

 

チームホンダ 

Posted by tatsuno, filed under 今日のチーム本多. Date: 8 月 18, 2008, 7:38 pm | 5 Comments »

本隊はカトマンズへ到着いたしました。
 
例によりシミコットの雲が停滞気味で、飛行機の予定が立ちませんでした・・・が!
偶然来た軍基地への物資輸送ヘリを復路をチャーターし、昨夜カトマンズに到着しました!!!
ネパールガンジより別途、陸路輸送した荷物も、道中の土砂崩れで到着が遅れましたが、先ほど届きました。
 
チームホンダはこれより各種申請などの作業などを終えて帰国の準備となります。
今後もお楽しみに!!!
ナマステ~♪

Posted by tatsuno, filed under 今日のチーム本多. Date: 8 月 17, 2008, 7:19 pm | 2 Comments »

飛行機待ちのシミコットより
紅一点、鈴木隊員の登頂レポートをお届けいたします
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いつのことだろうか。
気がついた時には『もっともっと山を知りたい!』っと私は強く心に想い、そんな気持ちの根っこがしっかりと芽生えていたんだ。
あれは、23歳の9月に札幌の実家に帰って来た時。あの状況は今でも一度も忘れた事がないよ。私は、暗いダークな迷い道にはまってしまって、自分の生きる道がわからなくなっていた時期だった。自分が生きている存在すら否定をしたかったくらいだ。何か自分にしかできないものを・・・と。
私の第2の生き方のスタート地点が、そこから始まった。5歳から大好きでスキーを始め、アルペンスキーの世界にドップリ浸かり、楽しくって大好きだったスキーが19歳で大嫌いになり、選手生活を続ける苦しさと、約15年間、幼い頃から親や協力者達と一体になって積み重ねた努力の賜物を思いっ切りやめる勇気からくる辛さから逃げ、もがいて、何が自分らしさなのか。何が。何が。っと。探していた。
そんな時・・・『山』だけが頭にポカーンと浮いた。
そしたら、2度と触れないだろうと思っていた、スキーをもう一度はくチャンスが自然と訪れて・・・
そしたら、あの時頭にポンっと浮いた『山』とも出会ってしまったんだ。きっと人は、本人自身が素直に思い描くものが現実化するのだろう。
そして、私にとって人生初めてのヒマラヤ未踏峰登頂の挑戦。その山を世界で初めて滑った事が今の自分の現実の足元となった。全てのものが、自分の前に現れるもの起こるものが、新鮮で初めてだったし、『全ての自分に訪れる苦労や幸せは私に必要な情報で、自身を大きく育ててくれるラッキーなもの』だって、長い長い年月の時代を超え、いつもいつの時代も地球を高い場所からドッシリと見ていてくれる鋭く尖ったヒマラヤの山々は、私に、その言葉を知識ではなく、知恵としてプレゼントをしてくれたよ。
あぁ・・・沁み込むよ。
ヒマラヤの山で私が味わった雪は、人間の手が加わっていない地球環境が生み出した『美雪』だった。こんな、雪は見た事がなっかたし、私の過去の身体の中にインプットされている遠い雪質の記憶の中にも無かった。どの場所の雪面をみても、目が点になってしまうほどだ。そして、ふと頭に浮かんだ。それは、タケさんに出会った時に感じたものだった。『何でこの人は?こんなに?雪山を楽しそうに滑ったり、ハングリーな精神をむき出しながらスキーを滑る事ができるのだろうか』っと思った時の事を思い出し、私の頭の中をサっ!と過ぎったんだ。
そしてその瞬間、私も身体いっぱいで感じて気づいてしまった。『あぁ・・・これなんだ』って。タケさんの中で、とどまる事なく沸々と温められているワクワク感に似たこのエネルギーの源は、二度と味わえないこの山と雪からくる情報だろうって。
また、山と雪が前よりもっと好きになってしまった。
とても愛しいよ。
この綺麗で素直で無邪気な気持ちを山とスキーに対しても、その他のものにも、何歳になっても抱く自分のハートがいいし、これからもそう居ることだろう。
そして、この大切な気持ちを抱く事ができたのも、今回一緒に登頂に望んだ仲間がプレゼントしてくれた。私は、自分以外の人に生かされている事を強く感じた瞬間にもなった。人間にしかできない、人と人の無限の目に見えない繋がりの可能性も。人は、強く何かを達成しようと望んだ時、「自分が何を知らないか」を知らなかった自分に気付くようだ。だからこそ今までよりもっと、その一瞬一瞬をひたむきに、小我を忘れ懸命に、感謝の心を持って、誰かと心の繋がる時を切に生きたいとおもった。たった一度の生き方を。
この気持ちを、本多さん、ヨシさん、タケさん、マサルくん、シェルパーさん達、私の家族や自分を取り巻く全ての人達と、今回の遠征にご協力して頂いた方々へ感謝の気持ちを贈ります。本当にこのような環境をつくって頂いたり、共に力を合わせながら過ごして頂き感謝の気持ちでいっぱいです。
何千年もの年月を経ている雄大な地球の中で、この時代に同じタイミングで生まれあなたと出会えた事に感謝します。
ネパール・シミコットにて
鈴木 彩乃

Posted by tatsuno, filed under 今日のチーム本多. Date: 8 月 16, 2008, 10:03 am | 4 Comments »

本隊はシミコットに到着しました。

例により飛行機待ちです。

本日は本多隊長からの登頂レポートです

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ヒマラヤが形成されて以来何万年もの間、人類を拒み続けていた処女峰。
広大な氷河からそそり立つその黒い峰には、長い長い時間の流れと地球の息吹が、
神秘的な地層や氷壁となって刻み込まれている。

今回、チームホンダ全員がその頂に立てた意義は極めて大きい。
未踏峰登頂には、当然ながらルートなど無く、他の山とはまた違った難しさがある。
特に今回は、現地住民との間で起きた確執により予定していた未踏峰に足を踏み入れる事すら出来ず、
キャラバン半ばより完全に手探りの状態で前進し、新たな目標となる頂を探すことから始めなければならなかった。そんな中、メンバー全員が互いに協力し合い、励ましあいながらネガティブな出来事をポジティブな可能性に変えていった力は、本当に素晴らしい結果と、深い絆を生んだように思う。

長い登攀を経て未踏の頂に立った時、長年に渡って捜し求めていたものが手に入ったような強い感動と
今までの数々の冒険への感謝、そしてこれからも新たな夢に向かって挑戦するという決意が生まれた。
若いメンバーそれぞれも、何物にも変え難い大きな感動を得たようだ。
特に、初めて本格的な登山に挑戦し、女性として世界初となる未踏峰山頂からのスキー滑走を行った
鈴木彩乃隊員の大きな勇気と絶え間ない努力に心から賞賛を送ると共に、この経験を経た彼女が、
夢を忘れず、成長を続けてくれる事を期待して止まない。

結果や成果は、行動しなければ生まれない苛酷な世界への挑戦の末に得られるもの。
これからも健康な活力が許す限り夢への挑戦を続けたい。

本多通宏

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Posted by tatsuno, filed under 今日のチーム本多. Date: 8 月 15, 2008, 5:44 pm | 2 Comments »

チームホンダはシミコットまであと一日のところまで進んでいるようです。
さて、飛行機は飛ぶのかな・・・
今日は門谷隊員の登頂レポートです
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「ザクッ、ザクッ。」
アイゼンを雪壁に突き立てる音が、夜明け前の静かな雪稜に響く。

雪とも霧ともつかぬ寒々とした空気の中、それでも時間と共にうすら明るく成りつつある周囲を見て
心のどこかに安堵を感じ、同時に太陽の偉大さを改めて噛締める。

6時半を過ぎると、何とか写真撮影に耐えるだけの光が出てくる。
一丸となって急峻な斜面を進むメンバーにカメラを向け、ファインダーを覗きこむと、静かに息を止めてシャッターを切る。
標高約5500m、一枚撮影する度に酸素の薄さが身に沁みる。しかし、ファインダーの中のメンバーだって、同じ状況の中
登っているのだ。弱音を吐くわけには行かない。
事前に行われた加藤登攀隊長とシェルパたちによるしっかりした偵察とルート工作によって、チーム全員快適な登高が出来る。
急峻な雪壁を登りきると、終に頂上稜線に出た。生憎、霧は晴れずシャッターチャンスには乏しいが、
細い稜線を一歩一歩踏みしめ、頂上に向かう。
本多隊長もしっかりとした足取りで、一歩一歩着実に登っている。
「夢をもて。努力すれば夢はいつか必ず叶う。」
道中よく私にそう諭してくれた本多隊長は、今、私の目の前でそれを実行している。
 
 
そして、山頂。
人類未踏の場所に上がった感動は、筆舌に尽くしがたかった。
そしてそれ以上に、本多隊長をはじめメンバー全員が見せる、歓びの表情を写真に収められた事が本当に嬉しかった。
数多にある被写体の中でも、人の夢と、それへの挑戦の末にある幸福や喜びの姿ほど美しい被写体は無い。
未踏峰に登るという夢を持ち、困難や障害を協力しあいながら乗り越え、それを叶えた。
山頂でファインダー越しに見たメンバーの笑顔は、最高に美しいものだった。
また、若輩者ながら一写真家としてその瞬間に立ち会わせてもらう事の出来た私自身の笑顔も、至上のものだったに違いない。
門谷 優
写真1 上へ
写真2 頂上にて
写真3 撮影中の私

Posted by tatsuno, filed under 今日のチーム本多. Date: 8 月 11, 2008, 6:05 pm | 4 Comments »

本隊は、ベースキャンプを離れ、シミコットへむけてキャラバンを再開しています。

7月10日に滞在していた温泉のあるケルミ村を経て、明日にはシミコットへ到着できるかと思います。

アタック詳細記です。

ここまでどれだけの障壁を越えてきただろう。灼熱のネパールガンジーでのフライト待ち。天候が回復しやっと飛ぶと思ったらタイミング悪く大規模なストライキが起こり、wait、wait、wait・・・。急遽ヘリコプターで飛び、長いキャラバンの末に辿りついた目的の山タプクヒマールの麓ハルジ村。まさかの地元住民の反対に遭い、なんと山を見ることなく断念。その後極西北ネパールを歩き歩き、自分達の足と目と汗で山を探した。やっといい谷を見つけたと思ったら、再度の地元住民の反対・・・。今度はなんとかこの問題を解決して、ついに僕達は無名の未踏峰を探し出した。後は登るだけだ。しかし、その山は落石がひどく断念。そして最後の最後に今日僕たちがアタックする山と出会うことができた。ここまで来れたのは、何と言ってもとにかく最後まで本多隊長が希望を捨てずあきらめなかったからに他ならない。隊長が前に進む事だけを考えてきたから僕たちもついてこられた。本当にここまでが辛く長い道のりだった。だけど、今日僕達は念願の未踏峰にアタックできる。間違いなく僕達は幸せ者だ。
午前三時。時計のアラームの音で目を覚ます。順応は十分のはずだが、やはり気持ちが高ぶってあまりよく眠れなかった。寝袋をしまい、EPIストーブに火をつけ、お茶を沸かし、それで喉を潤す。起きてからのこの一連の動作をいったい今まで何度繰り返してきただろう。一種の「儀式」みたいなものだ。同じテントにいる本多隊長の体調も良いようだ。ネパールに来てから一ヶ月ちょっと。本多隊長はただの一回も少しも体調を崩す事なくここまできた。僕もたくさんの人たちと山に登ってきたが、これほどまでに徹底して自己管理ができる人はそうはいない。意志の強さがそれを可能にしているのだろうと、近くにいてひしひしと感じる気迫がそう教えてくれる。
アルファー米のおかゆと味噌汁という簡単な朝食を済ませ、靴を履き、ハーネスを装着し、ヘッドランプをつけ、テントの外に出る。天気はガスがまだ残っているが、星もちらちらガスの隙間から見えるのでそのうち晴れてくるだろう。本多隊長も「よし!この天気なら行けるな!」と更に気合を入れなおしている。他のメンバーも体調は万全のようだ。彩乃ちゃんはヒマラヤ初挑戦。初アタックだ。
午前四時半。暗闇の中おのおののライトの灯を頼りに出発。HAPのラムさんとアンタレさんにまず先行してもらい、昨日安全確保の為にルート上に張ったロープの支点のチェックと、トレース付けを頼んだ。その後僕が続き、すぐ後ろに本多隊長とサーダー。登山の経験の少ない彩乃ちゃんをタケさんとHAPのカイラさんが挟むようにして歩き出す。マサルは写真撮影の為、この隊列の中を自由に動いてもらうことにする。
まずは30度ぐらいの雪の斜面を左上していく。本多隊長は闇の中、足元を一歩一歩確かめながら慎重に登っていく。やはり調子がいいのだろう。足取りはしっかりしている。
40分ぐらい登り、岩のガレ場のトラバースとなる。昨日ここから頂上稜線まで50mロープを10本Fixした。各自しっかりロープに自己確保をとり、岩の上にアイゼンという相性の悪い足場をこなしていく。ガスはまだ残っているが、段々と明るくなってきた。
ロープ2本分進み、また雪の上に戻る。ここからロープ4本分今度は30度ぐらいの雪面をトラバース気味に少しずつ高度を上げていく。
後ろを振り返ると、みんな適度な緊張感を持ちながらも、この未踏の斜面を楽しんでいるように見える。本多隊長は決して速いペースではないが、止まることなく確実な一歩を踏み出して、登ってくる。この天気、このメンバーの調子なら問題ない。しかし油断は禁物だ。
順調な時こそ気をつけなければならない。山は心の隙を突いてくる。大切なのは謙虚さであるという事をこの15年間の山生活で嫌というほど思い知らされてきた。謙虚な気持ちを忘れたら自然は本当の美しさを見せてくれない、普遍的な真実を見せてくれない。ただそこに残酷な姿を晒してくるだけだ。自分の存在の小ささを謙虚に受け止める強さを心に持たなければならない。
そして、最後の核心部である斜度40度~45度の雪壁にきた。ここはアッセンダー(ロープにかけ自己確保する特殊な道具)をセットし、ロープにテンションをある程度かけながら希薄な酸素の中で体を持ち上げていく。今いる高度は5550m。海抜0mの約半分の酸素量だ。焦っても酸素は入ってこない。集中して肺の中のものをできるだけ多く腹式で外に出す。そして集中して吸い込む。これを永遠繰り返していく。とても単調な行為だが、この事だけが、今の自分を支えてくれる。
タケさんを見ると、この雪を滑る事ができるのかどうか、雪質を確かめながら登ってきているようだ。彩乃ちゃんは初めての経験に少し戸惑いながらも力強くスキーを担いで高みを目指している。
雪壁を1P、2P、3P、じりじりと登っていく。本多隊長もさすがにこの急傾斜の登りは辛いようだ。しかし怯むことなく、闘志をむき出しにしている。このパワーはどこから出てくるのか。
そしてついに頂上稜線に達する。天気も回復してきて、青空が見えてきた。あと少しだ、僕たちの夢の果てまで。
最後は真の頂上まで、細い雪の稜線が続いている。
僕が先頭になり、慎重にロープを張っていく。ついにここまで来たんだ。ついに。名もなき未踏峰の頂上は岩が露出していた。
本多隊長が何かをかみ締めるように、最後の数歩を歩く。隊長にとって長い長い道のりであったはずだ。
僕がこの登山に誘われた時、「人生とは自分にとっての宝物を探す旅ではないでしょうか。」そう本多隊長は言った。そしてその宝物を見つける為に、この一年、いやもっともっと長い時間をこの時の為に費やしてきた。そして僕たちもその思いについてこさせてもらった。
頂上に立った時の本多隊長の笑顔を僕はおそらく一生忘れないだろう。人はこんな表情を持つ為に生まれてきたのではないだろうか。ついにやったのだ。僕たちはネパール時間午前7時59分、未踏峰(5750m)の登頂に成功した。
タケさんも満面の笑みで立つ。この人の自然を愛する気持ちは本物だ。彩乃ちゃんは初めてのヒマラヤでいきなり未踏峰に立ってしまった。辛かっただろうと思う。苦しかっただろうと思う。それでも弱音を吐くことは決してなかった。泣き言を言うことは決してなかった。頂上で涙する彼女に本多隊長が「よく頑張ったね。夢を持ってあきらめず一歩一歩進んでいけば、何でもできるんだよ」と優しく声をかけていたのが印象的だった。マサルが皆の表情を写真に撮る。この若い可能性に溢れたフォトグラファーとの出会いは僕にとってはかなり刺激的なものであった。ネパール人4名も少しおどけて頂上に。
「この世に仲間ほど素晴らしいものが他にあるとは到底思えない」と言ったのはエンデュアランス号を率いた極地探検家アーネスト・シャクルトンだ。
登山という行為に功績があるとすれば、それは人間同士を深く結び合わせる事ではないだろうか。
共有した多くの困難な時間、共有した多くの感動、信頼。共に見上げた無数の星々。これらは決して金銭で買うことができない。
この共有感に優る宝物は他にはないのではないか。そう思ってしまいたくなるようなものが登山という行為にはある。
頂上から皆で周りを見渡す。ヒマラヤが形成されて以来、この点に立った人類はいなかったはずだ。だとするとこの風景は僕たちが始めて目にするものだ。自然が自分達のものになると考えるのは人間の傲慢かもしれないが、せめて今だけはこの山も風景も自分たちだけのものとして眺めていたい。応援して下さった皆様への感謝の気持ちと共にそんな気持ちにとらわれた。
よく「頂上に立った瞬間の気持ちは?」と聞かれる。正直それは「立った者にしか分からない」としか答えようがない。
「今後何が起ころうとも、この瞬間に生きているだけでたくさんだ!」と、世界初の大西洋横断に成功したリンドバーグは叫んだと言う。
この偉大な先駆者、冒険者と同じ気持ちだと言うのは余りにもおこがましいが、登山にもこれに近い感情はある。
頂上に立つまでには長い時間を要するが、頂上にいる時間は短い。しかしその短い時間の中に、それまでの全てが、大げさに言えば人生の全ての喜びや幸せが、とてつもなく凝縮された形で、自分に迫ってくる瞬間がある。そんな瞬間を、稀にしかないそんな瞬間を生きていたいと思っていることは確かだ。
一通り記念撮影を終えた後、僕達は頂上にケルンをつくり、その下にそれぞれのメッセージ、写真を入れたBOXを埋めさせてもらった。
頂上を去る瞬間は、いつだって名残惜しく感じる。しかし僕達は還るべき場所に還る義務がある。
下山に際して、スキーヤーの児玉、鈴木隊員は当初の予定通り、頂上稜線からのスキー滑降を成功させた。(タケさんのスキー滑走レポート参照)
スキー素人の僕には、全く理解を超えた出来事であった。
陽があたり雪が腐り始め、下りはかなり歩きづらかったが、全員無事にC2帰着。その後このキャンプ地を撤収し、C1まで下降。
本多隊長は疲労はしていましたが、最後まで気持ちを切らさず、この日を歩き通した。
テントに倒れこみ、コーヒーを沸かして飲む。
本多隊長は言った。「大切なのはいつだって志だ」「どう生きたか、ではなくて、どう生きるか、なんだよ」
志を持って、坦々と懸命に日々を重ねる事の大切さを、本多隊長に教えて頂いた。
この登山に参加させてもらってよかった。そう思った。
 
 
By 加藤
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今日のチームホンダのキャンプ地

Posted by tatsuno, filed under 今日のチーム本多. Date: 8 月 10, 2008, 12:24 pm | 3 Comments »

スキー滑降をおこなった児玉・鈴木両隊員の登頂&スキーレポートです。

また、本隊は本日よりベースキャンプを離れ、一路シミコットへとキャラバンを開始いたしました。

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昨日スキー道具とキャンプ道具を担いで、C1に上がってきた。
今日は高所順応とスキー道具のチェックや足慣らしを兼ねて、標高約5,000mのC1から標高約5,400mの
C2予定地に向かった。アイゼンやピッケル等の登攀具の扱いに慣れていない彩乃隊員にアタック時を想定した
トレーニングを行いながら、ゆっくりと登っていく。
ところが、ずっと体調万全だった彩乃隊員だが、今日の動きは緩慢で、とても辛そうだった。
そして、頭痛や吐き気といった高山病の症状を訴え始めた。
どうやら前日重たい装備を背負ってC1入りした時に、かなりの疲労がたまっていたらしい。
本多隊長の判断で、念のために携行していた酸素を毎分3リットルで30分吸ってもらうことにした。
酸素を吸って見違えるほど元気になった彩乃隊員は、「私も上に行く!」と言っていたが、
明日は荷物を担いでC2まで登ることになっており、体力温存と慎重な高所順応のために、今日は
本多隊長と共に途中からC1に降りてもらうことにした。
児玉隊員はC2の裏手に広がる大氷河で6本ほど足慣らしと撮影を行った。
気温が高いため、深さ50cmのぬかるんだ湿雪に縦筋が無数に入った難しい雪質。
C1に帰る途中は砂混じりの氷斜面。さすがはヒマラヤである。

8月4日
彩乃隊員の体調が心配されたが、一晩の休養でかなり高所順応できたようで、すっかり元気を取り戻していた。
今日はC2に滞在する荷物を背負っての登りだが、まったく問題ない様子で、特にシールを使って登りが好きなようで、いつもの笑顔で元気良く登る様子が印象的だった。
氷河上は気温差が激しく、朝方はガリガリに凍りついた雪面も、午後には根まで緩んでグサグサだ。
しかし、スキーを装着していない他の隊員やシェルパに比べ僕らのペースは快調で、ちょっとした優越感を味わう。
C2に到着して、明日のアタック&滑降に向けて、スキー用具と滑りの最終チェックのため、数本の足慣らしをした。
彩乃隊員は今まで経験したことのない雪質に一瞬面喰らっていたが、さすがは元オリンピック代表候補にもなった
スキーヤーである。すぐさま修正して滑ってみせた。
僕は、アトミックスキーの軽快さと、ガルモントの兼用靴のポテンシャルの高さに感動した。
2000年にマッキンリー山頂から滑降した時は2バックルでガボガボの兼用靴にヴォラントのツインチップスキーという組み合わせで、とても苦労した記憶がある。その頃からの道具の進化は本当に目覚しいものがある。

8月5日
午前4時30分に最終キャンプを出発。まだ真っ暗な中、ヘッドライトで足元を照らしながら、ゆっくりゆっくり登ってく。
ピークへの道のりは急斜面なので、スキーをザックにくくりつけての登りだ。
僕の装備はスキーを滑るための道具の他に、アイゼン、ピッケル、ハーネス、30mロープ、下降器、ユマール、シュリンゲ3本、カラビナ6枚、無線、ツェルト、ヘッドライト、防寒着、コンパス、時計、アーミーナイフ、日焼け止め、サングラス、行動食、水筒などなど。今回は既にフィックスロープを張っているので、割と軽装備だ。
加藤登攀隊長が全体をリードし、僕は彩乃隊員をリードする体制で、急斜面を時間をかけて慎重に登っていく。
僕は普段登って滑る時と同じように、一歩一歩雪質を確かめ、状況を観察していく。
メインとなる斜面は、それほど大きな斜面ではなく、斜度も最大45度、平均40度くらいなので、それほど難しくはないが、一番の問題はその先が崖になって落ち込んでいることだった。急斜面を標高差100mくらい滑走した後、崖の手前50mくらいで大きく左にトラバースして回避する必要がある。
万が一転倒して滑落するようなことや、雪崩に巻き込まれるようなことがあったら、崖の下に真逆さまである。
しかも、一番斜度がある上部の氷河が露出していて、ちょっと間違えると滑落しかねない状態だった。
ネパール時間7時59分に隊員全員が無事に山頂に到着し、喜び合い、称え合った。
しかし、僕らスキーヤーにとってある意味本番はこれからである。
僕は山頂にいる間も、ずっと斜面の攻略法で頭がいっぱいだった。
スタート地点に立ち、スキーの準備をしながら、いつもとは違う緊張に見舞われた。
彩乃隊員と一緒に用具のひとつひとつと、滑る時の注意事項を何度も何度も確認し合う。

ただ、彩乃隊員は本格的な山が初めてであり、「こんな雪質はじめて」と言っているため、本当に安全に滑り降りれるだろうかという一抹の不安が拭い去れず、いつになくアドバイスがしつこく、口調も厳しくなってしまう。
加藤くんとマサルが斜面でカメラを構えながら、自分が滑るかのように緊張している様子だ。
ここまで登山全般で隊を引っ張ってきた加藤くんも、「スキーのことは分からないので、タケさんに全て任せます」と言っていた。
雪質をスキーでチェックしようと、試しに1ターンしてみた。思ったよりも氷河が硬く、3メートルくらい「ガリガリガリ」と滑り落ち、ようやく停まった。これはスピードが乗ったらまず停まれないだろう。
特に30mくらい先には蒼氷が露出している部分があり、そこが核心部だ。
「とにかくゆっくり。加藤くんの高さに蒼氷があるから、そこが一番注意。もしも停まれなくなったり、雪崩が起きたりしたら、
斜面を左に横切って、フィックスロープに突っ込んで。」
緊張の中、斜面に躍り出た。今までの経験の全てでアイスバーンを1ターン1ターン刻んでいく。
やはり、斜度がきつく雪が硬いため、次のターンに移るまでに「ガリガリ」と落とされながら待たなければならない。
たまらず左の湿雪斜面に入り、足場をつくりなおす。しかし、そこは雪崩の危険があるので、すぐに元のルートに戻る。蒼氷の部分で多少体制を崩しそうになったが、なんとかコントロールして停まった。
さぁ、次は彩乃隊員の番だ。
アイスバーンを軽快に滑ってきた。「さすがは元ダウンヒラー、根性が座っている。」と思ったのは一瞬で、ちゃんと停まれるかとハラハラした。そのままのスピードで蒼氷に突入し、一瞬つんのめるようにバランスを崩した・・・!が、すぐに体制を整えた。
僕は思わず「もっとゆっくり!!」と声を荒げてしまった。
さて、核心部を過ぎ、斜度も大分緩くなった。ここから先は湿雪が積もっていて、滑落の危険はほとんどなくなった。
しかし、スラブ雪崩に巻き込まれる危険は十分にある。
湿雪のスラブ雪崩を回避するには、ある程度スピードが必要なので、テンポ良くターンしていき、最後に大きく左にトラバーバースして、スラブを回避した。
続いて彩乃隊員が軽快に滑ってきた。
しまった!スラブの回避の仕方について、説明が足りなかった。
彩乃隊員が滑っている背後でスラブがどんどん大きく勢いを増し、襲ってきている。
「こっち!こっち!こっち!」と隊員全員が叫んで、すぐにトラバースするように促すが、なかなか伝わらない。口から心臓が飛び出しそうだった。
しかし、そのまま素晴らしい滑りで、何もなかったように颯爽と滑り降りてきた彩乃隊員。
僕が蒼ざめた顔をしているのを見て、「どうしたの?」とキョトンとしている。
ある意味、彼女は大物になるかもしれない。
その後は危険がほとんどない斜面である。僕らはリラックスして、C2までの滑降を楽しんだ。
C2を撤収した後、重たい荷物を背負ってC1に戻る。
クレバスを回避し、砂と氷の入り混じった斜面をクタクタになりながらの滑走。
未踏峰滑走という目標を達成した満足感に浸りながら。
C1に到着してから、彩乃隊員はちょっと頭痛をうったえていたが、よくよく考えると、山もキャンプも初めての彼女が、毎日慣れないことや新しいことの連続の中、男性でも音を上げるような長いキャラバンと辛い荷揚げ、そして初めての高所という条件の中で、笑顔を絶やすことなく、最後まで登り、滑りきったことは、本当に本当に凄いことで、素晴らしいことだと思う。そんな彼女に対して、僕はバックカントリーの先輩として、最大の賞賛を贈りたい。

8月6日
「せっかくだから、もう一日滑って楽しんでおいで」と本多隊長が言ってくれた。
これはスキーヤーにとって最大のご褒美。なにしろ長い長いキャラバンの間も、毎日ずっと

スキーを背負ってやってきたのだ。
彩乃隊員は日に日に登る力も滑る力もアップしていき、頼もしく見えてきた。
加藤くんとマサルが撮影についてきてくれた。
全てが世界で誰も滑ったことのない斜面であり、そこでのターンひとつひとつが最高の贅沢だ。
雪質は正直いってめちゃくちゃ滑りにくいものだったが、だからこそ記憶に沁み込んでくるものだ。
スキーヤーに産まれて本当に良かった。
僕らはクタクタになるまで滑り、山々にさよならを告げた。
この遠征に協力して下さった方々、応援して下さった方々に感謝の気持ちでいっぱいです!
本当にありがとうございました!

By児玉

Posted by tatsuno, filed under 今日のチーム本多. Date: 8 月 9, 2008, 8:40 am | 6 Comments »

深い深い、心地よい眠りから覚めると、空はヒマラヤらしく青く青く輝き、朝陽に照らされた緑と可憐な花たちが、静かに優しく包んでくれた。
鳥たちは歌い、それに合わせて氷河から落ちてきた水が響き流れる。生きているということは、きっと単純にこういうことなんだろう。
こんな素晴らしい朝を人生で後何度経験できるだろう。
そんなことを清清しい表情でそれぞれのテントから起きてきた仲間たちの笑顔をみながら、ぼんやり考えいた。

ナマステ。加藤です。
昨日僕たちはBCに無事還ってきました!日本人5名。ネパール人10名。計15名全員怪我もなく元気です。
応援して下さった皆様、ご協力して下さった皆様、このホームページを見て下さっている皆様、本当に本当にありがとうございました!
チームホンダ隊は様々な困難を乗り越え、8月5日、念願の未踏峰の登頂に成功致しました!
これもたくさんの方々からご協力を頂いたお陰であると、隊員一同深く感謝しております。

僕たちは日本人5名。ネパール人4名で8月2日に5000m付近にあるC1に入りました。その日に加藤とネパール人2名で第一目標の山にルートをつくるべく、さらに上部に向かいました。雪壁上のルートに安全確保の為にロープを17本張り、頂上の肩5900m地点まで登りました。

頂上までは簡単な雪稜が続くだけとなり、後は一旦下り、皆でアタックするだけでした。しかしこの山にアタックをかけることはありませんでした。僕たちがルート工作を終えて、下る段階になって気づいたのです。このルートが日中落石の嵐になることを。目の前をテレビより大きな岩が何度も落ち、ものすごい音を立てて僕たちのルートを襲っている。あんなのに当たれば・・・想像することすら恐ろしい。

このルートを登ることはできない。完全に僕の判断ミスだった。下ることもできない。僕たち三人は大岩の陰に身を寄せ合って、落石が落ち着く夕暮れを待った。午後五時三十分。決死の覚悟で下り始めた。途中いくつか落石があったが、なんとか避けた。安全地帯までわずか40分程だったが生きた心地がしなかった。自分の判断ミスでサポートしてくれたネパール人の二人にまで危険な目に合わせて申し訳なくてしょうがなかったです。
「この山を登る事はできません。」こう言った僕に本多隊長は「そんな危険を冒す必要はない。命より大事な頂なんてないんだから。次の山に賭けよう」
 

8月3日。新たに僕とネパール人2名で、隣にある山を偵察した。その山はC1からみると、岩だらけでとても登れるようには見えなかったが、裏側に回ると急だが雪がついていて、何とか登れそうに見えた。僕たちは慎重に雪壁にロープを張り、頂上までの目処をつけた。
 

8月4日。全員でC1から5400m付近のC2まで移動。
 

8月5日。全員で朝4時半にアタック開始。本多隊長も絶好調で、ネパール時間午前7時59分に全員登頂。児玉、鈴木隊員はスキー滑降成功。
C2を撤収し、C1まで下る。
 

8月6日。本多隊長の提案でスキーヤー二人は新たな雪の斜面を滑降。その後C1を撤収し全員無事BC下山。

By kato

添付写真
1山頂にて、日本人メンバー
2スキー滑走直前
3BC帰着、プジャ塔前で遠征隊メンバー全員集合

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頂上の写真などが届きました。

明日以降、スキー滑降レポートや登攀の詳細レポートをお届けできるかと思います。

本隊はこれからシミコット空港へ向けてキャラバンを開始する予定です。

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本多隊長の音声メッセージはコチラ ↓

http://www.team-honda.jp/2008/system/cms/wp-content/uploads/2008/08/080807.mp3

 
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Posted by tatsuno, filed under 今日のチーム本多. Date: 8 月 8, 2008, 6:37 am | 6 Comments »

チームホンダ本隊は、無事にベースキャンプへ帰着いたしました。

今日はゆっくりと休養をとるようです。

沢山の応援メッセージ、本当にありがとうございます。

全てのメッセージは現地へ届いています。本当にありがとうございます。

登頂前後の写真やコメントなどはまだ整理中(?)と思われます。

いましばらくお待ちください。

チームホンダ

Posted by tatsuno, filed under 今日のチーム本多. Date: 8 月 7, 2008, 5:48 pm | 5 Comments »

08月05日
登頂成功!

現地より電話連絡が入りました。

現地時間午前7時59分、チームホンダは未踏峰への登頂に成功いたしました。

日本人隊員5名とネパール人スタッフ4名の計9名にて西ネパールの未踏峰(無名峰)へ隊旗を運ぶことができました。

現在、隊は下山中です。

詳細は連絡が入り次第、アップデートいたします。

ご声援、ご協力いただいている皆々様、本当にありがとうございます。

頂上での写真などはベースキャンプに到着後の配信になるかと思います。

いましばらくお時間をいただきたく思います。

チームホンダ

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グーグルアース位置情報

http://www.team-honda.jp/2008/system/cms/wp-content/uploads/2008/08/e9a082e4b88aefbc81.kmz

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協賛企業紹介

スミス
チームホンダは2005年のエベレスト遠征に続き、スミスのサングラス&ゴーグルを使用しています。
世界一過酷な条件であるエベレスト山頂において抜群の見易さと曇らなさを発揮し、僕たちの
信頼を欲しいままにしたスミス。今回、隊員はFACTORとⅤtiというモデルのサングラスを
採用。4種類のレンズを自由に交換することができるので、天候の変化が激しく、荷物の量も制限される
長期遠征に最適です。ゴーグルは抜群の視界の広さと曇らなさを誇るプロディジーを採用。
隊員一同とても気に入っています。

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Posted by tatsuno, filed under 今日のチーム本多. Date: 8 月 5, 2008, 5:52 pm | 27 Comments »

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